【2018/6/8 追記】順位戦の新たに確認された規定について最後に追記しました。

佐藤天彦名人への挑戦者を決める今期のA級順位戦もいよいよ佳境に入ってきました。

昨日(2018/1/11)時点で、久保王将、豊島八段の二人が5勝2敗と一歩リードしていますが、なんと今後の展開次第では最終的に全員が指し分けで並ぶ可能性が残っているそうです。

ちょっと興味深かったので、本当にそんなことが起きたらどうなるのか調べてみました。

「指し分け」って何?

そもそも「指し分け」ってあまり聞き慣れない言葉ですよね。

辞書で調べるとこのように説明されています。

将棋で,何番かの対局のあと,対戦成績が同じであること。
指し分けとは – Weblio辞書

A級順位戦は在籍する棋士による総当たり戦なので、11人いる今期の場合でいうと1人あたりの対局数は10局になります。

全ての対局した結果が5勝5敗になると指し分け、ということですね。

全員が指し分けになるパターン

まず、現時点での対戦成績は次の表のようになっています。

順位 棋士名 勝敗 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
1 稲葉 陽八段 4-4
屋敷

広瀬

深浦

渡辺

豊島

佐藤康

三浦

羽生
久保
行方
2 羽生善治竜王 5-4
広瀬

豊島

久保

行方

深浦

三浦

渡辺

稲葉

佐藤康
屋敷
3 渡辺 明棋王 4-4
佐藤康

深浦

屋敷

稲葉

広瀬

行方

羽生

豊島

久保
三浦
4 広瀬章人八段 3-4
羽生

稲葉

佐藤康

三浦

渡辺

屋敷

久保
行方 深浦
豊島
5 行方尚史八段 2-5
豊島

久保

三浦

羽生

屋敷

渡辺

深浦

広瀬

佐藤康
稲葉
6 屋敷伸之九段 2-5
稲葉

渡辺

深浦

行方

久保

広瀬

三浦
豊島
羽生
佐藤康
7 深浦康市九段 3-4
渡辺

稲葉

屋敷

羽生

豊島

行方

佐藤康
三浦
広瀬
久保
8 佐藤康光九段 5-3
渡辺

三浦

広瀬

豊島

久保

稲葉

深浦

羽生
行方
屋敷
9 久保利明王将 5-2
三浦

行方

羽生

佐藤康

屋敷

豊島

広瀬

稲葉
渡辺
深浦
10 豊島将之八段 5-2
行方

羽生

佐藤康

稲葉

深浦

久保

渡辺

屋敷

三浦
広瀬
11 三浦弘行九段 3-4
久保

佐藤康

行方

広瀬

羽生

稲葉

屋敷

深浦
豊島
渡辺

では、全員が5勝5敗になるように辻褄を合わせながら残りの勝敗を埋めてみましょう・・・。
(オレンジの枠が書き換えた箇所になります。)

順位 棋士名 勝敗 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
1 稲葉 陽八段 5-5
屋敷

広瀬

深浦

渡辺

豊島

佐藤康

三浦

羽生

久保

行方
2 羽生善治竜王 5-5
広瀬

豊島

久保

行方

深浦

三浦

渡辺

稲葉

佐藤康

屋敷
3 渡辺 明棋王 5-5
佐藤康

深浦

屋敷

稲葉

広瀬

行方

羽生

豊島

久保

三浦
4 広瀬章人八段 5-5
羽生

稲葉

佐藤康

三浦

渡辺

屋敷

久保

行方

深浦

豊島
5 行方尚史八段 5-5
豊島

久保

三浦

羽生

屋敷

渡辺

深浦

広瀬

佐藤康

稲葉
6 屋敷伸之九段 5-5
稲葉

渡辺

深浦

行方

久保

広瀬

三浦

豊島

羽生

佐藤康
7 深浦康市九段 5-5
渡辺

稲葉

屋敷

羽生

豊島

行方

佐藤康

三浦

広瀬

久保
8 佐藤康光九段 5-5
渡辺

三浦

広瀬

豊島

久保

稲葉

深浦

羽生

行方

屋敷
9 久保利明王将 5-5
三浦

行方

羽生

佐藤康

屋敷

豊島

広瀬

稲葉

渡辺

深浦
10 豊島将之八段 5-5
行方

羽生

佐藤康

稲葉

深浦

久保

渡辺

屋敷

三浦

広瀬
11 三浦弘行九段 5-5
久保

佐藤康

行方

広瀬

羽生

稲葉

屋敷

深浦

豊島

渡辺

おー、きれいに全員が指し分けになるように埋められました。

こうしてみると本当に可能性が残っているということが分かりますね。

全員が指し分けになるとどうなるの?

では、もし実際に全員が指し分けになった場合どういうことが起きるのでしょうか?

挑戦者、降級の扱いについてそれぞれ整理してみましょう。

挑戦者の決め方

まず、誰が名人挑戦者になるかの決め方についてです。

普段であれば一番成績が上位の棋士がそのまま挑戦者に決まりますが、上位の成績が複数人いる場合は話が変わります。

将棋連盟サイトの規定によると次のように説明されています。

・最高成績者が複数いた場合は、プレーオフを行います。
・最高成績者が3人以上出た場合は、順位下位の2人がプレーオフ1回戦を行い、その勝者が順位上位の棋士と対戦するという「パラマス方式」で挑戦者を決めます。なお、2位以下の順位はプレーオフの成績と関係なく、前期順位によって決まります。
順位戦について|日本将棋連盟

つまり、11人によるパラマス方式のトーナメント戦!で挑戦者を決めることになるわけです。

試しにそのトーナメント図を作ってみました。

トーナメント

こんな組み合わせのトーナメントは二度と見られないんじゃないかと思ってしまうほど圧巻ですねえ。。

一番下から登場する三浦九段、豊島八段などはこのメンバー相手に10連勝しないと挑戦者になれないわけですか。なんて険しすぎる道のり・・・。

降級者は誰になるか?

また気になるのが、この場合の降級者が誰になるかということ。

前述の将棋連盟サイトの規定にはそこまでの説明が書かれていなかったのですが、Wikipedia に指し分けの場合の例外ルールが記載されていました。

A級やB級1組では、原則として成績下位の2人が一つ下のクラスに降級する。ただし、指し分け(勝数と負け数が等しい状態)以上の成績を残した場合は降級しない(第27期A級順位戦[注 4]が唯一の事例)。 例えば、A級で1人の棋士(リーグ表10位ではない)が0勝9敗(降級)、残り9人が5勝4敗の成績だった場合、リーグ表10位の棋士は下から2番目の成績になるが、勝ち越しているため降級とならず、その次の期のA級は全11人・下位3人降級となる。また、次の期のB級1組はA級からの降級者が減ったため全12人となるが、そのまた次の期はA級から3人降級してくる(予定)ので降級は下位2人で変わらない。
順位戦 – Wikipedia

つまり、おそらく次のような形になるものと考えられます。(ただし今期もすでに1名多い例外的な形で行われている事情があるので、何かしらの特別措置が取られる可能性もあるかもしれません。)

  • 今期の降級者はなし。
  • 来期は13名(B級1組からの昇級2名が加わる)によるA級順位戦が行われ、降級者は5名(今期の3名+通常の2名)となる。

もしこうなったら、ただでさえ壮絶な降級争いがまたすごいことになりそうですね。

おわりに

というわけで、全員が指し分けになったらどうなるのかを調べてみました。

あくまで素人による調査ですので、もし既定の解釈ミスなど何か誤りに気付いた方がおりましたらぜひ教えてください!

確率的にこのケースが実現するのはよっぽどのことなんでしょうが、仮にそうなれば将棋界隈がまた一層盛り上がることは間違いないので、一生に一度くらいは見てみたいような気がします・・・。当の棋士の先生方はたまったものじゃないかもしれませんけどね(笑)

【2018/2/2追記】指し分け時の降級について

当記事内で「指し分けの場合は降級しない」という趣旨の説明をしましたが、どうもそのようなことは無さそうです。

こちらは朝日新聞記者によるその件に関するツイートより。

過去の第27期順位戦にて灘蓮照八段が5勝5敗の指し分けで降級を免れたというケースがありましたが、これはあくまで例外措置としてであり、「指し分けは降級せず」という明文化された規定は存在しないという理解が正しいようです。その年の記録は下記ページに詳しいのでご覧ください。

【2018/2/9追記】指し分け時の降級について

指し分けの場合の降級の扱い件について、さらに新たな見解が出たようです。

こちらは本日の朝日新聞記者ツイートより。

リンク先の朝日デジタル記事によると、下記のように指し分けを条件とする残留は認められないことが関係者間で確認されたようです。

特例で、定員より1人多い11人が参加する今期A級順位戦は、総当たりのため、5勝5敗の「指し分け(勝率5割)」になる可能性がある。過去のA級では、指し分けで降級枠に該当しても残留が認められた例がある。

 現在は、同じ事情でも残留は認められないことが、主催の朝日新聞社、毎日新聞社と日本将棋連盟の間で確認された。今期A級では10回戦終了時点で、指し分けの棋士が降級枠に入る可能性はなくなった。

 前例を有効と捉える見方もあったが、現在の規定に認める記述はなかった。連盟の鈴木大介常務理事は「今期の開幕前にこうした事態が起きた場合の対応をはっきりさせておくべきだった。これを機に、順位戦の規定について主催者間で改めて協議したい」と話す。

既定の見直しは後日行われるようですが、これを機にこういった議論が不要になるよう漏れのない規定が定まることを期待したいですね。

【2018/6/8追記】順位戦の新たに確認された規定について

今期の順位戦開幕を迎えるにあたって、これまで明文化されていなかった規定についての再確認が行われたそうです。

主に、下記の事項が新たに確認されたとのこと。

  • 総当たりではないB級2組以下のクラスにおいては、全勝者は必ず昇級するものとする
  • 指し分け(勝率5割)以上の成績をあげても、降級枠に該当した場合は降級となる
  • B級2組以下において降級点の人数枠に該当する一方、「2期連続指し分けで降級点消去」を達成した場合、降級点の数は従前と変わらない
  • A級において、降級枠に該当しながらプレーオフに進出した場合は、挑戦者にならない限り降級となる

この記事で取り上げた指し分けの扱いについてですが、指し分けても降級条件に該当すれば降級、との見解が明確に規定されたようです。

最新の順位戦規定については、下記の将棋連盟ページも合わせてご確認ください。