将棋の電王戦FINAL第2局 永瀬拓矢六段 vs Seleneの対局は、永瀬六段の88手目△2七同角不成に対してSeleneが▲2二銀を着手、その手が王手放置の反則として永瀬六段が勝利するという衝撃の一局となりました。
これで、第1局の斎藤五段に続きプロ棋士側の2連勝です!
対局の感想
Seleneはこの角不成だけでなく飛車、歩が成らずとなった時にもその着手を正常に判断できなくなるという不具合が潜在しており、永瀬六段はSeleneとの練習対局を重ねる中でその挙動をしっかり把握していたようです。この研究の鬼っぷり、半端じゃありませんね。。
さて、最後の不具合ばかりがクローズアップされがちですが、もっと特筆すべきは永瀬六段の将棋内容がSeleneを確実に上回っていたことでしょう。
対戦相手のSeleneおよび当局のニコ生放送で評価値を判定していたソフトやねうら王(第3回電王戦バージョン)は、いずれも最終局面の直前でSelene側が+数百点の優位と評価していましたが、永瀬六段は自身が優勢であることを認識、また局後のプロ棋士たちによる検討でもそのまま続けていれば永瀬六段側が勝っていた状況だったことが明らかにされていました。
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中盤はSeleneにリードを許していたとされる展開からの逆転勝ち、また電王戦を通じて後手番での初勝利、そしてあっと驚くとどめの一手、どれもがものすごいインパクトであり、とても価値がある1勝だったと思います。
対局後の記者会見上、永瀬六段はSeleneとの練習対局では勝率1割程度しか勝てていなかったという事実を語っていました。何だか背筋がゾワッとしました。絶対に勝たねばならないと自覚していた一戦に関わらずその相手になかなか勝てない現実、そのプレッシャーの大きさはどれほどだったのか。一歩間違えれば周囲に批判される可能性もある行為を、勝利への執着で決行したそのプロ根性。そして一割という勝率を大事な本番で引き寄せた勝負運。永瀬六段、お見事でした。
一方、敗れてしまったSeleneと開発者の西海枝さん。ソフトの不具合は本当に悔しかったことでしょう。
自分も仕事でシステム開発をしているので気持ちが分かる気がするんですが、自分で手がけたソフトウェアについて把握している範囲の問題点であれば「まだ実装中です」だの「仕様です」だのと平気な顔で言ってられますが、仕上げたつもりでいて不具合が潜在しているケースは品質の低いものを作ってしまった恥ずかしさ、相手に対する申し訳無さを感じざるを得ません。
数名のクライアントを前にしての問題発覚程度でもなかなかつらい思いをするのに、それが数十万人の視聴者や大勢のイベント関係者を前にした大舞台での不具合だったら・・・。想像するだけで震えそうになります。
しかし、西海枝さんは立派でした。つらかったのは確かだったでしょうに、それを決して表面に出すことはなくしっかりと永瀬六段の戦いぶりを讃え、また記者会見では歴史ネタ(自分に坂本龍馬について語らせたら3時間は話せる、などw)で場の笑いを取るなど、とっても大人の対応ができる懐の深い方だったように思います。
二人とも素晴らしい対局をありがとうございました。一日お疲れ様でした。
※おまけで、我が家のノートPCでAperyにこの局の棋譜解析してもらった結果を貼っておきます。1手10秒しか解析してもらってませんが、やはり後半はずっとSelene良しとの判断を下しているようでした。
まとめ
第2局までを見終わって、率直に感じていることをツイートで発言しました。将棋連盟の方々に、この気持ちをぜひお伝えしたい!
二局終わった時点でもう色々あって面白過ぎるんですが、こんなイベント本当にFINALにしていいんでしょうか? #電王戦
— Ko Takagi (@ko31) 2015, 3月 21
プロ棋士を志す人、将棋ソフトの開発を目指す人、観る将・・・将棋の普及という観点からすれば、連盟として電王戦を存続させるメリットは計り知れないほど大きい気はしますが。米長さんも誰のためにやるのかということを仰ってましたしね。 #電王戦
— Ko Takagi (@ko31) 2015, 3月 21
さあ、次回の電王戦FINAL第3局は3月28日(土) 稲葉陽七段 vs やねうら王 の対局となります。
対局場は函館の五稜郭!こちらも今から楽しみな一戦ですね!
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