先日、上野裕和六段(@hirokazuueno)のこんなツイートが目に留まりました。

そもそも深く考えたことがなかったもので、いざ「必死」と「必至」正しいのはどっち?と言われると、確かにはっきりと答えられません。

どちらかと言えば今まで「必至」の方が頭にはありましたが、じゃそれで自信があるか!と迫られるとまったく自信がないレベル・・・。

というわけで、この機会に「必死」と「必至」について自分でも調べてみました。

「必死」/「必至」とは

今さら説明するまでもないでしょうが、将棋用語で「必死」/「必至」とは、次にどんな受ける手を指しても詰みを逃れられない状態、のこと。

下図を例に言うと、手番が後手だとして、どんなに持ち駒を駆使して受けたとしても、次に先手が▲4二金打、▲6二金打のいずれかを差せば詰みになってしまうので、これは「必死」/「必至」となります。

棋書や資料から調べてみる

広辞苑

まず、自宅にあった『広辞苑』(第7版)で「ひっし」を調べてみました。

ひっ-し【必死】
③(「必至」とも書く)将棋で、王手に対して受けがなく、次に必ず詰む状態。しばり手。

早くも答えが出た感じもしますが・・・、これによると「必死」「必至」のどちらの言い方もあるということです。

広辞苑
広辞苑はこの見た目からくる説得力がすごい・・・。

棋書

また、身の回りにあった棋書をパラパラと何冊か開いてみて、すぐに「必死」or「必至」の記述が見つかったものをリストアップしてみました。

  • 「必死」と記述されていた本
    • 『どんどん強くなる やさしいこども将棋入門』
    • 『寄せの手筋200』
    • 『羽生善治の将棋辞典』
「必死」グループ
「必死」グループ
  • 「必至」と記述されていた本
    • 『ハンディー版 スグわかる!まんが将棋入門―ルールと戦法完全マスター』
    • 『将棋「初段になれるかな」会議』
    • 『将棋「初段になれるかな」大会議』
    • 『「観る将」もわかる将棋用語ガイド』
「必至」グループ
「必至」グループ

これを見ても、やはり本によって両方の記述が使われているようです。

ちょっと面白いなーと思ったのは、ともに将棋用語辞典系の『羽生善治の将棋辞典』と『「観る将」もわかる将棋用語ガイド』とで記述が分かれていたことと、いずれも監修が羽生善治九段である『羽生善治の将棋辞典』と『スグわかる!まんが将棋入門』の2冊で分かれていたこと。

また、サンプルが少ないのでたまたまかもしれませんが、発刊年が古い本の方がより「必死」が使われている傾向があるようにも感じました。

日本将棋連盟Webサイト

日本将棋連盟 Web サイト上に公開されているコンテンツを、「必死」「必至」それぞれで Google 検索してみました。

まずは「必死」で検索すると・・・約80件の検索結果がヒット。

必死の検索結果

一方の「必至」で検索すると・・・約52件でした。

「必至」の検索検索

コンテンツ数ではやや「必死」に形勢が触れているようですが、いい勝負であることは違いないでしょう。

コンテンツ数だけ見ればやや「必死」に形勢が触れているようですが、「必至」もよく使われていますし、どちらということなく両方ともに使われている言葉だということはやはり言えそうです。

識者の意見・コメント

始めの上野六段ツイートに対して、他の方のリプライにも色々と参考になるコメントがありました。

こちらは、内藤國雄九段の著書から引用されたというご意見。

将棋は玉を「詰める」もので、「死なせる」ものではないという考え方は、自然に受け入れやすい感じで良いですね。

また、こちらは将棋ライター・松本博文さん(@mtmtlife)からのコメント。

古くは「必死」と書いていたが、「死の字は不雅なので必至とした」という経緯があったのこと。これもなるほどです。

前述の棋書を調べていた時に、古い本の方が「必死」と書かれている傾向を感じたんですが、現代になるほど「死」という字を使いづらくなるような、時代背景との関係性もあるのかもしれませんね。

まとめ

というわけで、最後に上野六段もまとめられていましたが、結局「必死」でも「必至」でも正解!というのが答えのようです。

それと個人的にですが、こちらの回答もある意味大正解にしたいです。電王戦で盛り上がったあの頃、米長会長の名言、思い出しますねえ・・・。

この記事を書いた人

ko31

電王戦をきっかけに20年ぶり以上に将棋熱が再燃した、観たり指したりするのが好きなヘボ将棋ファン。
群馬在住繋がりで藤井九段の本で振り飛車勉強中ですが、根っからの三日坊主につき&頭の回転が悪くなかなか棋力が向上しません。将棋ウォーズによく出没しています。
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