先日発売された『証言 羽生世代』を読んだので、ご紹介したいと思います。
『証言 羽生世代』
『証言 羽生世代』の作者は、将棋観戦記者でもあるライターの大川慎太郎 (@00lll)さん。
大川さんについては、将棋ソフトに対する棋士へのインタビューをまとめた前作『不屈の棋士』がとても良かったので、今作も発売前からずっと読むのを心待ちにしていました。
本作は、将棋界の奇跡のような存在である羽生世代について、羽生善治九段本人を含む棋士16名へのロングインタビューをまとめた内容となっています。
ただ文面を追っているのに自然と棋士たちの声が脳内で再生されてくるほどリアルなやり取り、普段ではうかがい知れない本心、改めて思い知らされる羽生世代にそして将棋に対する棋士の情熱・・・。
ものすごく濃密で、読み応えのある一冊でした。
個人的に特に印象的だったのが、長きに渡って羽生世代に対抗する存在となってきた渡辺明名人の「羽生世代の将棋は今よりもレベルが高い」というくだり。
将棋 AI 全盛の現在にあって、単純な棋力に関しては将棋ソフトにならった現代の方が勝るのは異論の余地がないところでしょうが、 将棋の質や総合的な面では羽生世代と切磋琢磨していた頃の方がハイレベルだったと語ります。
羽生世代と将棋ソフトの両方に最も接点のある棋士の一人であろう渡辺名人からのコメントだけに、ものすごく説得力があり、また大きなリスペクトも感じられて非常にグッときました。
その他、どの棋士のインタビューも本当に素晴らしかったんですが、総じて羽生世代の面々がまだまだ上を狙う意欲にあふれる様が伝わってきたのがまた嬉しかったですね。
これまで以上に、羽生世代の棋士たちへの思い入れが深まってしまいそう・・・。
余談ですが、本書では対象になっていなかったカテゴリーの棋士たちへのインタビューもいつか見たいなと思いました。
例えば、羽生九段と研究会などで親しい距離にいる棋士たち、豊島将之竜王や永瀬拓矢王座といったトップ棋士、藤井聡太二冠を代表とする新勢力など・・・。気が早いですが、次作にも期待してしまいます。
というわけで、将棋が好きな多くの方にオススメしたい一冊でした。ぜひ!